誘電性液体に直流高電場を印加すると、電極から秒速1m以上の高速ジェット噴流が発生する。本研究は、このジェット噴流の発生メカニズムとその制御法を確立し、新しい流体制御技術として確立することを目的とする。 1. 2枚の透明電極を対向させ、絶縁性液体に浸漬して高電圧を印加すると、液面が上昇して1秒以内に平衡高さに達する。電極面をわずかに傾けたときに液面上昇が顕著であることがわかった。高速ビデオカメラで内部の運動を画像解析した結果、トレーサー粒子は高速で集合と離散を繰り返しており、液体中における粒子の存在確率およびその運動は局所的に非常に不均一であることがわかった。このときのサイズは膨張したときで直径約1mm、収縮したときは約0.5mmで、その周期は0.5秒程度であった。液面を上昇させる原因となる内部圧力の発生を支配しているのは、電場下における周期的な高速循環流であることがわかった。 2. 針電極から発生する大規模な循環流のパターンと電極配置の幾何学との関係について調べた。電極が1対の+-であるときには、ジェット流は必ず+側から-側へと発生するが、幾つかの電極を配置したときは、電極間を通過する大きな流れが発生することがあり、液体の流れは単なる電極間を結ぶ直線的流れではないことがわかった。さらに、ジェット流は+-両電極から発生していることが明らかとなった。 3. モデルとして、針状電極とノズルからなるインクジェット機構について検討した。これまでの研究では+から-へのジェット流が強いので、電極を+、ノズルを-となるような構造がインクジェット機構としては不可欠であると考えられたが、+、-逆にしてもノズルからジェットが発生することが確認できた。電極の三次元的空間配置が巨視的なジェット流を支配しているものと考えられる。
|