研究課題/領域番号 |
12555218
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
若林 勝彦 九州大学, 大学院・工学研究院, 教授 (20220832)
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研究分担者 |
多湖 輝興 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (20304743)
岸田 昌浩 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (60243903)
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キーワード | マイクロエマルション / シリカ包接 / フェライト / コバルト修飾マグネタイト |
研究概要 |
鉄酸化物を主成分とするフェライト系磁性物質は磁気記憶装置、高周波電子装置の基本的な構成物質であり、磁気記憶材料としてはCoフェライトが、高周波材料としては、Niフェライト、Mnフェライトが挙げられる。本研究では、高周波領域における磁気損失が小さいフェライト系磁性物質(Niフェライト、Mnフェライト)を金属酸化物で包接したナノスケールの磁性微粒子を調製し、新規な高周波用電磁波ノイズ除去フィルターやインピータンス素子を開発することを目的としている。本年度は、研究の第一段階として、鉄酸化物のみからなるマグネタイト(Fe_3O_4)微粒子、及びFe_3O_4の一部をCoで置換したCo修飾Fe_3O_4(Co-Fe_3O_4)微粒子をSiO_2で被覆した包接微粒子の調製に関する検討を行った。 1)マグネタイト微粒子のシリカ(SiO_2)による包接の検討 まず油中水滴型マイクロエマルション溶液中でFe_3O_4微粒子を調製した。この微粒子が分散したマイクロエマルション溶液にNH_3水溶液と包接物質であるSiO_2の原料となる珪酸エチル(テトラエチルオルソシリケート、TEOS)を加え、TEOSの加水分解反応によりFe_3O_4微粒子がSiO_2によって包接された微粒子の調製を試みた。種々のアニオン性、カチオン性、非イオン性界面活性剤と有機溶媒を用いて調製を行ったところ、界面活性剤には非イオン性界面活性剤であるポリオキシエチレン(15)セチルエーテルを、有機溶媒にはシクロヘキセンを用いたところ、Fe_3O_4微粒子を球状SiO_2で被覆した包接微粒子が得られた。Fe_3O_4微粒子の粒子径は約12nm、被覆物質であるSiO_2層の厚さは約15nmであり、非常に均一であった。 2)Co修飾マグネタイト微粒子のシリカによる包接とその磁気特性 Fe_3O_4微粒子が分散したマイクロエマルション溶液中にCoイオンを添加してフェライト前駆体微粒子を作製し、この前駆体微粒子がSiO_2によって被覆された微粒子を調製した。上記検討で用いた界面活性剤、有機溶媒を用いたところ、前駆体微粒子をSiO_2で被覆した包接型微粒子が得られた。フェライトの結晶化を促進させるため、500℃〜1000℃で焼成したところ、熱処理温度の上昇に従ってCo原子がFe_3O_4の結晶内に固溶し、Coフェライトが形成され得ていることが確認できた。Fe_3O_4をCoで修飾することにより、記憶材料として重要な磁力特性である保持力が15Oe(エルステッド)から780Oeへと、大幅に向上した。
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