研究概要 |
高濃度に窒素・リンを含有する畜産系排水は,湖沼の富栄養化および硝酸・亜硝酸態窒素による地下水汚染の問題の要因となっている。しかしながら,既存の活性汚泥法を小規模農家に導入することは不可能であり,畜産系排水を適切に処理できるコンパクトで高効率な有機物,栄養塩除去システムの開発が期待されている。われわれは生物学的窒素除去の硝化・脱窒という全く異なった条件で進行する2つの反応を単一槽内で同時に進行させることが可能なメンブレンエアレーション型バイフィルムリアクタ(MABR)を提案し,実験室規模で畜産系排水を対象とした長期連続処理試験を行った。 MABR出口の有機物濃度について測定した結果,除去率96%以上,除去速度0.29kg-C/(m^3・day)を達成した.窒素については,除去率80%以上,除去速度0.22kg-N/(m^3・day)を達成した。メンブレン表面積当たりの窒素除去速度は4.32g-N/(m^2・day)に達していたことから,生物膜内にて硝化・脱窒反応が逐次的に起こり,窒素除去が高効率に行われていることを確認した。微小電極による生物膜内溶存酸素(DO)濃度分布の測定を行った結果,基質供給時と基質供給後24時間経過時の濃度分布を比較すると,基質供給時には酸素浸透深さがおよそ300μm,24時間後では微好気部位も含めておよそ700μmまで酸素が浸透していることがわかった。さらにFISH法により生物膜内の微生物生態構造を観察した結果,独立栄養細菌であるアンモニア酸化細菌がメンブレン表層から400μm付近までクラスターを形成して生息し,生物膜の外側に他の細菌(従属栄養細菌)が存在していることを確認した。また,DO微小電極の結果と合わせるとアンモニア酸化細菌は微好気部位にも存在し,時間によりアンモニア除去効率が変動する可能性があることが示唆された。
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