研究概要 |
本研究では中空糸メンブレンを酸素供給素材および微生物固定化担体として用いるメンブレンエアレーション法を提案し,畜産排水の高度処理への適用を検討している。この手法を用いることで生物膜内における局所的環境条件を制御でき,硝化菌と脱窒菌を棲み分けさせ,単一槽内で硝化・脱窒反応を同時に行うことが可能となる。さらには,酸素供給を制御することで硝酸を経由しない亜硝酸経由型の窒素除去が期待でき,畜産排水のような低C/N比排水の処理プロセスとして有用であるといえる。 今年度は,メンブレンエアレーション型バイオフィルムリアクタ(MABR)を用いて畜産排水からの有機物・窒素同時除去試験を行った。また,反応場である生物膜内の解析を微小電極法を用いて行い,窒素除去経路の考察を行った。 C/N比が1.2と極めて低い畜産排水を対象に実験を行った結果,約1年間の運転によりMABR形成した生物膜の厚みは約1600mmにも及んだ。溶存酸素(DO)の浸透深さは約300mmであり,嫌気的部位が広くアンモニアなどの基質拡散律速を起こす可能性が懸念されるものの,供給された酸素が全て生物膜内で消費されていることが示唆された。以上より生物膜内において局所濃度の違いにより微生物間の棲み分けが起こっていることが示唆された。 本研究のリアクタにおいてアンモニア酸化細菌(AOB)は供給酸素の86%を利用していることが計算により示唆された。残りの14%を亜硝酸酸化細菌が仮に利用したとしてもこのリアクタの窒素除去経路の半分以上は亜硝酸を経由する脱窒であることが化学量論的評価から明らかになった。中空糸メンブレンから生物膜への酸素供給を制御することにより,MABRを畜産排水をはじめとした低C/N比排水に有効利用できることが期待される。
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