研究概要 |
「上部と下部,ならびに表層と中心部で材質が異なる円柱形状のモデル人工歯根」の開発を行うことを最終目標としている。すなわち,円柱の上半分に高強度アルミナ層(A層),下半分の中心部に高強度アルミナ層(B層),表層に多孔質アパタイト層(C層)を配したモデル人工歯根を想定し,その機械的強度を最大にするための,成形手法・焼結手法の開発を行っている。 本年度は,材料の組成・粒度分布と焼結体の機械的強度の関係を調査し,この関係をニューラルネットワーク(NNと略記)に学習させ,最適な機械的強度を与える原料粒度・焼結条件を探索する手法を開発した。学習・推定には,情報の通過点であるユニットが層状をなす階層型NNを用い,各ユニットへの入力Xと各ユニットからの出力Yとの関係は,シグモイド関数(Y=1/{1+exp(-X)})を用いた。実験試料には,粒度分布の異なる高純度アルミナを単独あるいは混合して用いた。これを100〜300MPaの圧力で成形した後,1623Kで焼結した。焼結体の強度は主要設備として購入したセミビッカース硬度計で測定した。実験データの一部を学習データ,残りを評価データとして,NNによる学習・推定を行った。NNへの入力値として,(1)成形体の空隙率および試料の混合割合,(2)成形圧力および試料の混合割合,(3)成形体の空隙率および試料の粒度分布,(4)成形圧力および試料の粒度分布を用い,NNからの出力として焼結体のビッカース硬度を得た。その結果,粒度分布の最大の試料と最小の試料を学習に用いるという条件下では,どの入力条件でも,混合試料の硬度をほぼ良好に推定できた。NNの構造としては,入力ユニット数4,中間層数1,中間層ユニット数4程度で十分であり,それ以上,ユニット数,層数を増やしても推定精度の向上には結びつかないことが明らかとなった。
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