研究概要 |
本研究の目的は、DNAの構造的な特徴である塩基対のスタッキングと、それに伴うパイ電子相互作用による長距離にわたる電子伝達能力を利用して、蛍光分光学的な測定を用いた新たな検出原理に基づくDNAのハイブリダイゼーション過程の高感度解析手法を開発しようとするものである。本年度の研究計画は、1)界面化学的手法によるDNAの固定化および2)塩基対のスタッキングを介した光誘起電子移動反応、であった。 1)界面化学的手法によるDNAの固定化 1本鎖DNAもしくはオリゴヌクレオチドを固体基板(導波路)に固定化するために、核酸塩基対形成を利用した。核酸塩基を親水基にして、疎水基にアゾベンゼンもしくは光重合基であるジアセチレンを挿入したアルキル鎖を持つ両親媒性化合物を合成した。これらの両親媒性核酸塩基の単分子膜を1本鎖オリゴヌクレオチドの水溶液上に作製すると、気水界面においてオリゴヌクレオチドが単分子膜に特異的に結合することがわかった。ジアセチレンを有する単分子膜では光重合により単分子膜を高分子化できることもわかった。(K.Ijiro et al.,Studies in Surface Science and Catalysis 132,481,2001,Elsevier Science B.V.,M.Morisue et al.,ibid) 2)塩基対のスタッキングを介した光誘起電子移動反応 電子ドナーと電子アクセプターをそれぞれ有する両親媒性化合物を合成して、カチオン性単分子膜をマトリックスとして単分子膜を作製した。混合単分子膜のある水面上で蛍光寿命を測れるように実験系を構築した。その蛍光寿命を用いてドナーからアクセプターへの電子移動を測定できることを確認した。
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