研究課題/領域番号 |
12555238
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研究機関 | 有明工業高等専門学校 |
研究代表者 |
正留 隆 有明工業高等専門学校, 物質工学科, 助教授 (30190341)
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研究分担者 |
田部井 久男 NTTアドバンステクノロジ株式会社, 先端基盤技術事業本部・デバイス技術部材料部門, 部門長
今任 稔彦 九州大学, 大学院・工学研究院・化学システム工学専攻, 教授 (50117066)
浅野 泰一 八戸工業高等専門学校, 物質工学科, 教授 (80311108)
黒川 陽一 福岡県保健環境研究所, 管理部環境計測課, 専門研究員
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キーワード | 内分泌かく乱物質 / シークエンシャルインジェクション / ビテロジェニン / 固相抽出 / 酵素免疫法 / 抗原抗体反応 / protein A / マイクロビーズ |
研究概要 |
1.内分泌撹乱物質とされている物質には女性ホルモンであるエストロジェンに類似した構造と作用を有しているものがある。これらは遺伝子に誤った情報を与えることにより生物の内分泌系を撹乱する。ビテロジェニン(Vg)は本来魚類等の雌にのみに存在するタンパク質であるが、魚類棲息環境水の内分泌撹乱物質による汚染のため、このタンパク質が雄にも発現するようになることが知られている。このことは、雄の魚類中におけるVgの存在の有無が環境水中の内分泌撹乱物質による汚染状況の指標となることを意味している。本研究では、Vgの測定法の簡便化、迅速化を目的とし、抗体固定化マイクロビーズを用いるシークエンシャルインジェクション分析法について検討した。 2.フローセルには、ビーズの捕捉や灌流が容易で、その開閉によってビーズの脱着が可能なジェットリングセルを用いた。抗体のFc部分に特異的に結合するprotein AによってVgの1次抗体を固定化したセファデックスビーズを調製した。まず、このビーズをセルに導入した。次に、一定のシークエンスに従って、試料、ペルオキシダーゼ標識抗Vgの2次抗体をセルに導入した。最後に、発色剤のo-フェニレンジアミン(OPD)を含むH_2O_2溶液をセルに導入し、セル内に備えた光ファイバーを通じて、酵素反応生成物の吸光度を測定した。 3.1次抗体とVgの反応時間及びその複合体と2次抗体との反応時間はVgの測定感度に大きな影響を及ぼすことがわかった。それぞれを2時間及び1時間と決定した。また、標識酵素存在下におけるH_2O_2とOPDとの反応時間を、測定の感度と迅速性の観点から20分とした。用いたビーズの濃度は1mg/mlであり、予備的実験により1次抗体の結合量は1.5ng/mg-乾燥ビーズであることがわかった。また、セル内に導入するビーズの量は約0.3mgであり、セル容積が8μlであることから、ビーズに固定化した1次抗体の量は12pgと推定される。試料濃度が7.8〜125ng/mlのVgを300μlセルに導入した。加える標識2次抗体の濃度を0.4μg/mlとし、OPDで発色されて得られたVgの検量線から、5から120ppbの濃度範囲のVgと吸光度の間には良好な直線関係が成立することがわかった。この直線の検量線は、ビーズに固定化された1次抗体と結合したVgの量に比例して2次抗体が結合していることを示している。実験の再現性から判断して、本法の検出下限は5ng/mlであった。
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