研究概要 |
鉛を含有しない低融点ガラスのフォトリフラクティブ効果はほとんど解明されていない.よって本研究では,SnF_2-SnO-ZnF_2-P_2O_5系ガラス(以降SZP系と略記する)を主な対象として,フォトリフラクティブ効果の解明を行い,その高効率化を目的としている.フォトリフラクティブ効果の最適化は主にガラス組成設計により行う.ホストガラスのフォトリフラクティブ効果の誘起波長と有機分子の非線形光学効果の動作波長を設計することにより,それぞれを独立にあるいは連動させて制御し,新しいコンセプトに基づいた光機能性デバイス用材料の提案を行うことを最終的な目標とする. 本年度は本予算で購入したエキシマレーザ装置を用い,作製したガラス材料に351nm(XeFレーザ),248nm(ArFレーザ)を様々な照射強度、積算照射量で紫外光照射を行い,照射前後のガラス物性の変化を観測した.特に,248nmのレーザ光を用いた場合は,試料表面でアブレーションが発現することを見いだした.ピッチ700nmの位相マスクを通したArFレーザ光を試料に入射することにより,表面グレーティングの作製に成功した.さらに作製したグレーティングの評価をレーザ光あるいは原子間力顕微鏡を用い解析した.その結果ガラス表面に位相マスクのパターンが転写されていること,数百nmの精度で表面微細加工(ピッチ,深さ)の制御が可能であることを報告した.また,355nmのXeFレーザを用いた場合,吸収端のレッドシフトが観測され大きな光吸収変化が観測された.この変化はシリカ系光ファイバで観測されているような欠陥生成によるものではなく,マクロな構造変化に基づく状態密度変化を用いたモデルで説明することができた. 次年度以降,有機分子含有ガラスの光学的非線形性と本年度明らかにした光照射を融合していく予定である.
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