本研究ではC1原料である一酸化炭素の有機分子への組込のために、従来型の金属触媒種によるカルボニル化反応を凌駕する新しいカルボニル化の手法の確立と応用展開を目的としているが、初年度につづき平成13年度には以下に示す新たな成果を得た。 本年度においては不飽和重結合を有する4-アルケニルヨージド類の光カルボニル化反応を検討し、複数の一酸化炭素の組込みと5員環環化を同時に実現する新規な反応系の構築に向け、精力的に研究を行った。、光照射下に4-ペンテニルヨージドと一酸化炭素とアルコールとの反応を遷移金属触媒の添加を含め、種々の条件検討を行った。その結果、パラジウム触媒を加えた光カルボニル化反応系で目的とした2位がアルコキシカルボニルメチル置換されたシクロペンタノンを良好な収率で得ることに成功した。パラジウムを加えない反応条件下では五員環ケトエステルの収率は低いものとなった。また、パラジウム触媒を用いた熱的な反応条件では期待した反応は全く進行しなかった。このことから光、金属触媒の組合せが最適条件と結論づけられた。 続いて種々の置換された4-アルケニルヨージドを用い、本反応が十分な一般性を持つ反応であることを実証した。さらに、アルコールのかわりに二級アミンを用いた場合、対応する五員環ケトアミドと一酸化炭素が計3分子取り込まれた五員環ジケトアミドが生成することを明らかとした。 立体選択性に依拠した反応機構に関する研究においては、ラジカル種によるカルボニル化と環化そして2段階目のカルボニル化が含まれることが強く示唆された。一方でエステルとアミドの生成段階ではアシルパラジウム種め関与が示唆された。これらの複数の一酸化炭素の取り込み反応は従来型のカルボニル化反応では達成できなかった新たな成果であり、活性種をハイブリッド型とすることで一酸化炭素の炭素源としての利用に新局面を切り開く好例となろう。
|