光学活性なビ(オクタヒドロナフチル)リン酸(H_8-BNPA)を合成し、これを一連の希土類トリイソプロポキシドと反応させて、対応するキラルな希土類塩[Ln(H_8-BNP)_3]を調製した。ベンズアルデヒドとDanishefskyジエンのへテロDiels-Alder反応のルイス酸触媒としてこれらのキラル希土類リン酸塩を用いたところ、室温での反応において極めて高いエナンチオ選択性が得られた。既に、スカンジウム錯体が96%eeを与えることを見出していたが、今回、触媒調製法を種々検討した結果、イットリウム触媒で99%eeを、エルビウム触媒およびイッテルビウム触媒で98%eeを達成した。また、ランタン触媒で93%ee、サマリウム触媒およびディスプロシウム触媒で91%eeを得たが、これらの触媒に関するICP発光分析等による炭素、水素、リン、および金属イオンの元素分析の結果、最も高いエナンチオ選択性を与えたイットリウム錯体やイッテルビウム錯体は、イソプロパノールと水を1:1の割合で含んでおり、これらよりイオン半径の大きなサマリウム錯体やディスプロシウム錯体は1:2、また、ランタン錯体は2:1の割合であることが明らかとなった。 一方、塩基触媒系として、ランタン/ビナフトール/トリフェニルホスフィンオキシド/クメンハイドロパーオキシド触媒系を用いる共役エノンの不斉エポキシ化の実験条件を詳しく検討した結果、反応速度に応じて酸化剤をゆっくり滴下することにより、大量合成条件下でも化学収率ならびに光学収率を高く(>95%ee)保つことができることが明らかになった。
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