研究概要 |
先に開発した優れた不斉エポキシ化触媒系(ランタン/ビナフトール/トリフェニルホスフィンオキシド/クメンヒドロパーオキシド)の実用化(スケールアップ)に向けて、触媒調製条件や不斉酸化条件を詳しく検討した。具体的には、基質毎での触媒量、触媒濃度、基質添加時間、反応温度の検討を行い最適化を行った。その結果、基質20kg〜80kgの規模の反応をラボ実験とほぼ同等の効率(化学収率90%以上、エナンチオ選択性97%以上)で進行させることに成功し、一部企業化が成立した。また、展開研究として、得られた高光学純度のエポキシケトン体を医薬品中間体として重要なβ-ヒドロキシ-α-アミノ酸誘導体に変換することにも成功した。 一方、光学活性ピナフチルリン酸のスカンジウム塩を不斉ルイス酸触媒として用いることにより、共役エノンへのアルコキシアミンによる高エナンチオ選択的(up to>99% ee)なマイケル付加反応を達成した。さらにこのマイケル付加生成物を塩基触媒で処理することにより光学純度を保ったまま対応するα-ケトアジリジンに変換することにも成功した。いずれの反応も室温で進行しほぼ定量的化学収率を与えるので、本法は極めて実用性の高い高光学活性アジリジン化合物の製造法として有用である。また、ここで得られたα-ケトアジリジンは、その光学純度を保ったまま対応するβ-ヒドロキシ-α-アミノケトン誘導体に変換された。上述のエポキシケトンから誘導される1,2-アミノアルコールの立体配置はアンチ型であるが、ケトアジリジンから誘導されるものは逆のシン型を与えるため、本研究で開発された希土類不斉触媒を用いる不斉エポキシ化と不斉アジリジン化を駆使することにより、可能な4つのジアステレオマーのすべてを高光学純度で合成することが可能になると思われる。
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