研究概要 |
本研究では、疾病に伴う病巣の微小変化を高感度で認識するインテリジェント型造影剤を開発し、磁気共鳴画像診断の高精度化を計ことを目的とする。MRIの造影剤として利用されているガドリニウムイオン(Gd)をキレートするdiethylenetriamine-N, N, N, N, N-pentaacetic acid(DTPA)を繰り返し単位に有する高分子を合成し、ポリカチオンであるPoly[2-(dimethylamino)ethyl methacrylate]とポリイオンコンプレックスを形成させ、そのポリイオンコンプレックスの緩和能のpH依存性を評価した。 緩和能のpH依存性は0.47TのBruker NMS 120 Minispec 0.47 Tを用い40℃で行った。高分子化造影剤のみではpH5から9の範囲において緩和能に大きな変化は見られず、R1 relaxivityは7.6L/mmol/secであった。それに対し、ポリイオンコンプレックスはpH5から7にかけて減少し、8からまた上昇するプロファイルを取ることが観察された。pH5から7においてはポリイオンコンプレックスの安定化に伴う脱水の為にGdイオンと水との相互作用が減少していることに起因していると考えられ、またpH8以降に増加においてはPoly[2-(dimethylamino)ethyl methacrylate]の脱プロトン化によるイオンコンプレックスの不安定化に起因していると考えられる。このように、ポリイオンコンプレックスのpHに依存した物性変化により、pHの変化を緩和能に変換できることが分かった。
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