交換連鎖移動機構のリビングラジカル重合(DT-LRP)を乳化系に移すと、正味のラジカル寿命の延長と交換移動頻度の増大が理論的に予測される。つまり、均一系に比べて高分子量で分子量分布が狭く、末端活性率の高いポリマーが得られるはずである。本研究の目的は、この予測を実験的に検証することによりLRP法の性能の向上を図るとともに、LRP法と工業的に極めて重要な合成法である乳化重合法を両立させるための基礎的知見を集積することである。 この種の研究にはモデル重合系の選択とその反応速度論的理解が不可欠である。この観点から、DT機構の重合系と考えられるポリスチレン-ヨウ素(PS-I)およびPS-SC(CH_3)S(RAFT)系の均一系における重合機構を詳しく調べた。その結果、両系の活性化(不活性化)反応はともにDT-機構が支配的であることを確認するとともに、後系の移動速度定数が前系のそれより30倍以上大きいことを明らかにした。次年度以降の研究で、不均一系(乳化系)での重合との相違を反応速度論的に解明する予定である。
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