研究概要 |
本研究では葉酸を部分修飾した疎水化多糖類を合成し,各種の制癌剤・抗癌剤のための優れた癌細胞特異的キャリアーを開発することを目的と他.癌抗原に対するモノクロナル抗体の修飾よりもはるかに容易に且つ純度の高い,安全なキャリアーを得るために,これまでの経験と知見に基き疎水化多糖の葉酸誘導体の合成と物性評価を行った. 米国Perdue大学のP.S.Low教授のグループがすでに報告している葉酸誘導体の合成法を参考にして,我々自身で開発してきたコレステロール修飾プルラン(CHP)に葉酸残基(Fol-)を化学修飾した.NMR,IR,HPLCその他の各種分光学によって,目的化合物の得られたことを確認した. 続いて合成された葉酸修飾疎水化多糖類の水溶液中挙動,特に水中での安定性と構造変化に重点を置いて物理化学的検討を開始した.葉酸残基置換CHP(Fol-CHP)もCHPと同様に,水中で安定なナノサイズの自己会合体を形成するが,未置換CHPとの混合物でも安定な微粒子を形成する.これによって葉酸残基の密度を望み通りに制御することも可能となった. 正常細胞と癌細胞の両者について,修飾CHPの細胞毒性と細胞内移行を詳細に検討するために,細胞培養実験室の整備,細胞培養の準備を完了した. ナノサイズ微粒子上での葉酸残基濃度〔密度〕と細胞内移行効率との相関について検討を開始する.
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