本研究では、まず光によって酸化されやすい緑色色素であるジフェニルナフタセン(DPN)を用いたポリマー素子において素子作製過程で光を照射することでポリマーEL素子の発光色の制御を試みた。これらの素子の発光色は光の照射量に依存しており、光を照射していない部分はDPNからの緑色発光、光を照射した部分は青色蛍光色素であるテトラフェニルブタジエン(TPB)由来の青色発光が得られた。続いて光酸化消光しやすい色素であるDPNとルブレンを同時に分散させた素子において、照射する光の波長を制御することでそれぞれの色素を選択的に変性させ、黄色-緑-青の三色に発光するマルチカラー素子の作製にも成功した。さらに光酸化消光しやすい赤色色素を用いることで同様にしてRGBマルチカラー素子の作製にも成功し、フォトブリーチング法は有効なマルチカラー化法であることが証明された。 また、青色発光ポリマーの開発として青色色素であるフェニルアントラセンを側鎖に有するビニルポリマーを合成し、有機EL素子へと応用した。ここではホモポリマーだけではなくビニルカルバゾールとのコポリマーも合成し、素子特性の向上を試みた。またコポリマーにおいてその共重合比(カルバゾールユニット:フェニルアントラセンユニット)を90:10と変化させることによって、アントラセン部位でのエキシマー形成を抑制し、435nmにピークを持つ青色発光ポリマーを得ることに成功した。また、ポリマーに電子輸送性材料であるPBDを30wt%ドープした素子では最高輝度や外部量子効率を飛躍的に向上させることに成功した。 以上、述べてきたように本研究ではポリマーを発光層に有する有機ELディスプレイの極めて簡便かつ高精細な塗り分け技術を確立することに初めて成功した。有機ELディスプレイのフルカラー化ばかりでなく、低コスト化に向けて大きな可能性を示すことができた。将来これらの技術を用いた安価で高品質な有機ELディスプレイが実用化されることを期待する。
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