研究課題/領域番号 |
12555265
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
井上 義夫 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 教授 (60016649)
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研究分担者 |
藤戸 輝昭 日本電子データム(株), 分析機器技術部, 主任研究員
浅川 直紀 東京工業大学, 大学院・生命理工学研究科, 助手 (80270924)
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キーワード | パイ電子共役 / 高分子 / 固体NMR / 光学的検出NMR |
研究概要 |
本研究は、固体核磁気共鳴法(SSNMR)ならびにゼロ磁場下における光学的検出磁気共鳴(ODMR)分光計の開発を目的として研究を行った。本年度は、250MHz〜1.5GHzの非常に広帯域の共鳴の検出を可能にする光学検出磁気共鳴検出器の作製に成功した。この新たに作製した検出器は、コンデンサーやコイル等の部品の交換を行っていた従来の集中定数型検出器と異なり、数層からなるキャパシタを内部にもつ同軸キャビティからなる定数分散型検出器である。π共役系高分子を従来型の検出器で測定する際にしばしば生じていた放電の問題は、同軸キャビティ構造を採用することにより、回避されることがわかった。分光計の制御の要であるタイミング発生装置として、パルスパターンジェネレータ(24チャンネル,10ナノ秒分解能)を作製した。このパターンジェネレータを用いてマイクロ波の送信側の強度および位相調節や受信側の位相検波を行う。現在、マイクロ波の送受信の各部分と光学系のシステム化を行っている段階である。一次構造制御型のポリ(4-メチルチアゾール)[P4MeTz]およびポリ(3-メチルチオフェン)[P3MeTh]を脱ハロゲン化重縮合法により合成し、示差走査型熱量計(DSC)測定およびNMR実験を行った。DSC測定により、P4MeTzでは約293K前後に異常比熱を伴った吸熱ピークが観測され、P3MeThでは約363Kに異常比熱を伴わない吸熱ピークが観測された。P4MeTzは複素五員環がface-to-face型のπスタッキングすることにより側鎖に存在する多数のメチル基が異常に高密度に配列した構造を形成する。側鎖のメチル水素を99%重水素ラベルしたP4MeTzを合成し、固体^2H四極子エコースペクトルを118〜393Kの温度範囲で測定したところ、転移の高温相側では、メチル重水素の粉末スペクトルに非対称性が現れた。また、重水素の化学シフト値の温度変化から、転移の高温相側でのメチル基回転の活性化エネルギーが低温相側のものと大きく異なった。室温付近でDSC測定により観測された吸熱ピークはface-to-faceの分子間πスタッキングの融解に帰属されると考えられ、この融解によりπ共役系の広がりが2次元から1次元に低下したことが異常比熱の原因と考えられる。重水素NMRの実験結果から、P4MeTzでは、通常は二次の相転移として考えられる回転転移とπスタッキングの融解とがカップリングしていると考えられる。この結果は、二次元スピンエコー実験により決定したメチル炭素の磁気遮蔽テンソル主値にも現れた。これらの結果をまとめた論文を現在、投稿中である。
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