研究課題/領域番号 |
12555266
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松岡 秀樹 京都大学, 工学研究科, 助教授 (40165783)
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研究分担者 |
坂本 正悟 (株)ユーエスアイシステム, 課長
筒井 和典 大塚電子(株), 主査
松本 幸三 京都大学, 工学研究科, 助手 (90273474)
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キーワード | 界面ダイナミクス / X線反射率 / 中性子反射率 / 表面動的光散乱 / 高分子単分子膜 / 高分子ブラシ / エバネッセント波 |
研究概要 |
測定対象となるシラシクロブタン-メタクリル酸ジブロックコポリマーが水面上で形成する単分子膜のナノ構造をX線反射率測定にさらに詳細に調査した。特に、親水層内の絨毯層/ブラシ層の二層構造への塩効果に関し重点的に調査を行った。その結果、親水層部分の厚さは塩濃度の増加とともに極小をとることが見いだされた。これは、ブラシ内外の浸透圧の大小関係によるものと考えている。すなわち、ブラシ内のイオン強度がsubphaseより高い場合は、低分子イオンはブラシ内に入り込むことができず、ブラシ層内とsubphase内の浸透圧差を縮める働きをし、塩濃度の増加とともにブラシ層は薄くなっていく。しかし、両層内のイオン強度の大小関係が逆転すると、添加された低分子イオンは、浸透圧差を補償すべく、水分子とともにブラシ層内に入り込んでいき、その結果ブラシ層が厚くなる、と解釈できる。よって、浸透圧がブラシ構造に与える影響の重要さが確認され、この構造のダイナミクス、すなわち浸透圧効果と形態エントロピー効果の兼ね合いによる呼吸モードの直接検出が重要課題であることが実証された。 この呼吸モードや単分子膜の粘弾性的性質を検出可能な表面動的光散乱装置(SDLS)の改良をさらに進めた。昨年までの実験では、ヘテロダイン光学系を採用することにより、数百ミリ秒程度の緩和時間を持つ比較的遅いダイナミックモードの検出は成功していたが、呼吸モードなどが対応すると考えられるより速いモードは検出できなかった。これは、実験室系における人為的な微振動が、水面上の表面張力波に影響を与えているものと考え、磁気浮上式除振台に換え、より高精度のピエゾ式のアクティブ除振台を導入し、再検討を行った。その結果、ピエゾ振動子により発生した表面張力波が、SDLSにより得られる時間相関関数にはっきりと現れ、その相関時間は表面張力と定性的に一致することを確認した。
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