研究課題/領域番号 |
12555267
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
菊池 裕嗣 九州大学, 大学院・工学研究院, 助教授 (50186201)
|
研究分担者 |
佐々木 園 九州大学, 大学院・工学研究院, 助手 (40304745)
高原 淳 九州大学, 有機化学基礎研究センター, 教授 (20163305)
|
キーワード | 液晶 / 表面配向 / ラビング / 水流ラビング / 配向増幅 / ポリイミド / アンカリング転移 |
研究概要 |
液晶分子を均一に配向させるため、一般に、高分子表面を機械的に一方向に布でこするラビング法が用いられる。しかし、高分子表面のラビング処理の際に生じる静電気や埃が液晶表示素子の表示特性に大きな影響を与えるため、ラビング法に代わる新規の液晶界面配向制御技術の開発が強く望まれている。本研究では、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸表面上に一軸方向に水を流した後、熱キュアによりイミド化すると、流した水の方向に液晶分子が配向することを見出した。 高分子としては、剛直性ポリイミドBPDA-PDA(ユニチカ(株))を使用した。液晶としては4-シアノ-4'-ペンチルビフェニル(5CB)を使用した。ポリイミドの前駆体、BPDA-PDA酸の薄膜表面上に一方向に水を流し、熱キュアによりイミド化を行った。このような処理を施した2枚のポリイミド基板間に液晶が等方相で注入された液晶セルを作製し、偏光顕微鏡を用い、液晶の配向状態や透過光強度のサンプル回転角依存性を評価した。 偏光顕微鏡観察により、343Kで水流でラビング処理したポリイミド基板を用いた液晶セルは、均一なホモジニアス配向のモノドメイン状態であることが示された。また、クロスニコル下におけるセル透過光強度のサンプル回転角依存性より、液晶セル中で、液晶分子が均一なホモジニアス配向をとっていることが明らかとなった。液晶の配向方向は、水流方向と一致した。水流処理後イミド化しなかった場合、及び、イミド化後に水流処理した場合も、高配向は得られなかった。この配向効果のメカニズムとして、イミド化前のポリアミック酸の状態で水流の刺激を受けることにより、ポリアミック酸表面の分子鎖に異方性が生じ、その異方性がイミド化により増幅され、液晶分子をその方向に配向させると考えられる。 ポチジエチルフマレートとシアノフェニル系ネマチック液晶との界面において、温度によって配向がホモジニアス(基板に平行)からホメオトロピック(基板に垂直)に変化するアンカリング転移が観測された。アンカリング転移は、アンカリング強度が極めて小さいときに起こる現象であり、液晶配向制御法の確立に重要な知見を与える。
|