研究概要 |
平成12年度はエタノール水溶液からエタノールを選択的に透過する膜として,ジメチルシロキサンマクロモノマー(DMS)とメチルメタクリレート(MMA)とからのPMMA-g-PDMSグラフト共重合体を調製し,浸透気化法における膜透過性能を検討した結果,膜の選択透過性がPMMA-g-PDMS膜のDMS含有量によって著しく異なることが明らかとなり,これらの選択透過性の違いは膜のミクロ相分離構造のモルホロジーに著しく依存していることを明らかにした。そこで,本年度はエタノール選択透過性の向上と選択透過性の膜構造の関係をより明確にすることを目指して,PDMS高分子開始剤を用いてMMAとのブロック共重合体としてPMMA-b-PDMSを合成し,これら共重合体から得られるPMMA-b-PDMS膜のエタノール水溶液の選択分離特性を種々の条件下で検討し,その選択透過性と膜のモルホロジーとの関係についても検討を加えた。DMS含有量の低いPMMA-b-PDMS膜は水選択性を示したが,DMS含有量が多い膜ではエタノール選択性を示し,PMMA-g-PDMS膜とよく類似した膜性能を示した。しかし,膜の透過型電子顕微鏡観察の結果,PMMA-b-PDMS膜のミクロ相分離構造はPMMA-g-PDMS膜よりPDMS相の連続構造がラメラ構造となっており,エタノール選択透過性に有利なモルホロジーをとっていることが明らかになってきた。 一方,ポリジメチルシロキサンのエマルションからの多孔質膜によるエタノール選択濃縮については、凍結乾燥成膜におけるキャスト液量の変化や温度差制御気化浸透法における透過条件の変化に伴う膜性能が検討された。その結果,多孔質膜の構造と透過条件との関係の制御がエタノール選択濃縮に著しく影響されていることが明らかになってきた。
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