研究概要 |
凍結乾燥法によるポリジメチルシロキサン(PDMS)のエマルションからの多孔質膜の成膜をキャスト液量,凍結安定剤量などの成膜条件を変えて検討した。得られたPDMS多孔質膜の温度差制御気化浸透法におけるエタノール水溶液からのエタノール選択透過性の膜性能に及ぼす透過条件の影響が種々検討された。10wt%のエタノール水溶液の供給液温度を一定にし,膜周辺温度を供給液温度より低くすると,透過速度は減少したが,透過液中のエタノール濃度は増加し,透過液中のエタノール濃度が約75wt%までに濃縮された。この膜周辺温度と供給液温度との差の増大に伴う透過速度の減少と透過液中のエタノール濃度の増加は,緻密PDMS膜の場合と同じ傾向である。しかし,多孔質PDMS膜の場合には緻密膜とほぼ同程度のエタノール濃縮性能を保持すると同時に,透過速度は約1000倍となり,優れた膜性能を示した。また,膜の二次側の減圧度を増すと透過速度は増すが,透過液中のエタノール濃度は減少した。このように供給液と膜周辺との温度差や膜の一次側と二次側の圧力差がエタノール水溶液の濃縮に著しく関係していることが明らかになり,多孔質PDMS膜を温度差制御気化浸透法に適用することにより,高い透過速度とエタノール選択透過性を得ることができ,従来にない高い膜性能を認めた。 また,エタノールに対して高い親和性を示し,膜密度が低いポリ[1-(トリメチルシリル)-1-プロピン](PTMSP)膜を用い,温度差制御気化浸透法でエタノール水溶液の濃縮を検討した。膜透過分離特性の温度差に伴う傾向は,PDMS膜と類似していたが,10wt%エタノールが約90wt%にまで濃縮された。そして,膜厚を変えてもエタノール選択透過性には変化が見られなかったが,透過速度は膜厚を薄くすると著しく増加した。これら多孔質PDMS膜,PTMSP膜による温度差制御気化浸透法におけるエタノール濃縮の透過分離機構に考察を加えた。
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