研究概要 |
船体横断面に発生する主要な断面力のひとつに,鉛直方向に作用する剪断力がある。この剪断力が断面方向に変化する場合,断面には反りが発生し,そのために生じる船長方向の直応力が曲げ応力に加算される。本年度は,この曲げ応力の精度良い計算方法を開発すると同時に,これを縦曲げ逐次崩壊解析コードHULLSTに組み込み,剪断力が縦曲げ最終強度に及ぼす影響を評価できる解析システムを構築した。本システムで解析を実施し,隔倉積みバルクキャリアでは,最大で15$\%$程度縦曲げ最終強度が低下することもあることを明らかにした。 つぎに,ビルジキールがある場合のビルジ部の崩壊挙動を,一連の有限要素法解析を実施することによって明らかにした。そして,この計算結果に基づいて,新たに縦曲げ逐次崩壊解析コードHULLST用のビルジ要素を構築し,HULLSTに組み込んだ。本コードを適用して一連の解析を実施し,ビルジ部をハードコーナー要素として取り扱った場合と比較して,最終強度はほとんど変わらないこと,しかしながら,最終強度後の耐荷力に少し差が生じることを明らかにした。 理想化構造要素法を改良し,縦曲げ逐次崩壊解析に理想化構造要素法を適用するための基礎的な検討を行なった。具体的には,たわみ関数に導入する高次項が崩壊挙動に及ぼす影響を明らかにした。その結果に基づいて解析コードを改良し,より高精度の解析結果が得られるようになった。 縦曲げ最終強度の簡易推定のために,サギング状態に対しては上甲板の連続防撓パネルとしての座屈崩壊強度を,一方,ホギング状態に対しては,船底板パネルあるいは内底板パネルの連続防撓パネルとしての座屈崩壊強度を基準とし,これに弾性断面係数を乗じれば,縦曲げ最終強度の近似値が得られることが確認できた。 3年間の研究成果を取り纏め,縦曲げ最終強度評価システムの雛型を構築した。
|