超大型浮体がその周辺海域の海洋環境に与える影響として、付着生物による水質浄化の効果とともに付着生物の死骸の海底落下に伴う水質悪化が無視できないことから、本年度は付着生物として東京湾での優占種であるムラサキイガイを取り上げ、ムラサキイガイの摂餌活動と呼吸活動に及ぼす水温、塩分濃度などの影響を広範囲に調査し、これに基づきムラサキイガイによって代表される付着系の数値モデルの精密化を図ることとした。具体的な調査は、東京湾隅田川河口に位置する東京商船大学練習船汐路丸の係留用浮き桟橋からムラサキイガイを自然状態で付着させるための円盤状の基盤を多数海水中に降ろし、2002年6月から2003年1月まで海水中に固定した。これらムラサキイガイが付着した基盤をベルジャー計測装置にとりつけ、外部の海水を遮断して、一定時間間隔でベルジャー内の植物プランクトンおよび溶存酸素の変化を連続的に計測し、その結果からムラサキイガイの呼吸活動および摂餌活動を代表するパラメータの水温および塩分依存性を調査した。その結果、これらパラメータは明らかに水温および塩分に依存し、この事を考慮した付着系モデルを用いれば、従来の付着系モデルに比べ良好にムラサキイガイの活動を記述できることを明らかにした。
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