研究概要 |
本研究では,大阪府泉佐野市の府営りんくう公園シンボル緑地内にある内海(一種の人工環礁を形成している)を対象として,内水域生態系の物質循環に着目した実地調査を行うことにより,その生態系の特徴と水質浄化機能の実態を明らかにするとともに,生態系を含む数値モデルを開発し,人工環礁の効果的な設計/管理方法を検討することを目的とした. 実地調査としては,水質,大型海藻,海底堆積物厚さを中心とした月1回の調査と,底質や生態系を含む四季の総合調査を行った。その結果,海藻による栄養塩固定効果および酸素供給効果が大きいこと,堤体の礫間接触酸化効果を保持するためには海藻による酸素供給が必要であること,海底堆積物中の有機物の主な起源が枯死した海藻であることなどがわかった. また,生態系モデルの開発に必要となる生物パラメタ取得を目的とした底泥酸化分解速度を求める実験,ナマコの摂餌速度を求める実験,アオサの成長速度を求める実験等を行った.その結果,底泥の酸素消費速度は水温依存性が強いこと,ナマコの底質改善効果としてはバイオターベーション効果しか期待できず,むしろ海藻を好んで摂餌することなどがわかった. さらに,現地調査や実験結果を踏まえて生態系モデルを開発し,いくつかの数値実験を行った.その結果,人工環礁の栄養塩固定効果が海底有機堆積物の増加に伴って年々減少すること,堤体体積と内水域体積の比の変化は炭素および栄養塩の固定量にはあまり影響せず,水深を深くすると,大型海藻の成長が制限され,固定量が減少することなどがわかった.
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