研究概要 |
本研究の目的は,微小外力変化に伴う法面・法肩の岩盤傾斜変化を高精度計測して,残壁の日常監視を行うとともに,残壁の異常を早期に検出する高度な監視システムを構築することにある。本年度の研究により得られた成果を項目ごとにまとめると以下のようである。 (1) 高精度傾斜計測法に関する検討:高精度傾斜計2台を購入し,石灰石露天採掘鉱山(青森県・尻屋鉱山)において高精度傾斜計の長期計測を実施している。得られたデータから,長期的線形トレンドと周期的トレンドを分離するとともに,周期的トレンドを当サイト近郊の尻屋港における潮汐変化と比較し,周期トレンドは地球潮汐に起因することを明らかにした。この地球潮汐による岩盤斜面の周期的変形挙動の計測は世界初の貴重な成果である。 (2) 重機荷重を利用した岩盤評価法:重機の移動に伴う岩盤変形が上記の高精度傾斜計で計測可能であることを確認した。そして,重機(バックホー)と傾斜計測点との水平距離と岩盤の傾斜量の関係を測定するとともに,弾性理論および3次元有限要素法により測定結果を解析し,当岩盤の弾性定数を推定した。これにより,重機荷重を利用した新しい原位置岩盤載荷試験法を提案した。この成果は,現在,論文として取りまとめ中である。 (3) 微小外力変化に伴う岩盤変形挙動の解析:採掘計画・周辺地形を考慮した3次元有限要素モデルを作成して,採掘進行に伴う残壁の傾斜変化,地球潮汐や重機移動による残壁の変形挙動を解析し,それぞれの条件における傾斜変化量と変化パターンを明らかにした。
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