研究概要 |
組換え体植物で抗体を産生させるために、一般的なプロモーターを利用した抗体の産生条件の検討、効率的な生産のためのプロモーターの単離、物質生産の至適宿主の検討をおこなった。 すでに、B型肝炎ウイルス(HBV)感染の阻止能を有するヒトモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマT6Jの樹立、T6Jの抗体cDNAのクローニングと、その組換えFab断片と単鎖可変領域抗体断片(T6J ScFv)の大腸菌、培養細胞で産生することに成功している。CaMVの35Sプロモーターの下流にこのScFV cDNAを結合し、イネを形質転換して、独立のカルスに由来する4個体の形質転換体を得た。これらはすべて導入遺伝子の発現が認められた。4個体中の3個体では、T6J ScFvタンパクが検出され、HBsに対する強い結合活性が認められた。 一方、効率よい遺伝子発現法の確立を目指して、イネの篩部特異的タンパク質遺伝子の単離を試みた。イネcDNAライブラリーから2種類のcDNAクローン(Rpp16,Rpp17)を単離した。in situハイブリダイゼーションによって、これらの遺伝子が師部特異的であることを確認した。さらにこれらのゲノム遺伝子を単離し、プロモーターの下流にGUS遺伝子をつなぎ、イネを形質転換した。組換え体植物を用いてこれらの遺伝子の発現部位を同定した。 物質生産の宿主としてサトウキビが有望であると考えられたため、サトウキビの形質転換法の改良を試みた。国内4系統、海外3系統のサトウキビより2,4-D添加MS培地を用いてカルス誘導を行なった。その結果、一部の品種では置床後約1週間程度からカルスが誘導されはじめた。その後の増殖速度は系統間で差が見られ、農林1号および大島在来については約2ヶ月後で十分な増殖がみられたが、農林10号およびIN84-111についてはカルスの増殖が著しく遅かった。
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