研究概要 |
サトウキビ茎頂組織よりカルスを誘導し、パーティクルガン法あるいはアグロバクテリウム法により遺伝子導入した。ハイグロマイシンあるいはジェネティシンを用い、組換え体を選抜したところ、アグロバクテリウム法により抗生物質抵抗性細胞が得られたので培養を継続した。物質生産に有効な遺伝子の単離を目指し、物質の転流に関与している師部細胞の限定単離とそこからのRNA抽出を行った。師部組織の限定単離は、顕微鏡下で、レーザーマイクロダイセクションにより実施した。限定単離はモニターで確認した。150ショットの細胞をプールしてそれらよりRNAを抽出した。 前年度までにSPKが種子貯蔵物質生合成に関わるカギ因子であることが明らかになったので、これの生理機能を調べた。その結果、SPKは未熟種子のショ糖合成酵素をリン酸化することで、その基質に対する親和性を変化させることが明らかとなった。このことを利用すれば、未熟種子での物質生産を制御することが可能になるものと考えられた。一方、効率よい遺伝子発現をめざしてさまざまなプロモーターの利用を試みた結果、遺伝子発現に組織特異性が認められた複数の遺伝子を見いだすことができた。 A型肝炎ウイルス(HAV)に対し中和活性を有するヒト抗休(KF94)をイネの緑葉で発現させることを目指した。免疫グロブリンのシグナル配列あるいはER保持シグナルであるKDEL配列を有する,あるいはどちらも有さないKF94抗体のL鎖とH鎖遺伝子導入イネが得られた。また、各々の抗体遺伝子導入イネで、L鎖あるいはH鎖のmRNAが検出された。L鎖mRNAの発現が認められたイネにおいてL鎖タンパク質の発現が証明された。現在,H鎖の発現について検討している。今後、L鎖及びH鎖を単独で発現しているこれらのイネを交配することによって、機能的ヒトFab断片を発現するイネを生産できるようになると考えられる。
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