研究概要 |
本研究は,生理過程に基づく水稲生育モデルと3次元形態情報を有機的に関連付けることによって,実用的で多分野へ応用可能な生育シミュレータを開発しようとするものである。昨年度までにコシヒカリの孤立条件個体の形態計測を行い,そのモデル化を試みた。本年度は,圃場で栽植密度や植付け本数の異なる条件で栽培したコシヒカリの生育,形態情報を収集・解析するとともに,26品種・系統の葉身形態の遺伝的変異を調査して簡易な形態記述方法を検討した。植付け本数・栽植密度がコシヒカリの分げつ出現歩合に及ぼす影響は第3節の1次分げつで顕著に認められた。第3節の1次分げつ出現歩合は,m^2当たりの個体数および温度の関数として簡易に表すことができた。一方,上位節の分げつ出現歩合は,相対分げつ位が7以上になるとほぼ直線的に減少した。以上の関係に基づき,栽植様式や温度条件を考慮した分げつ形成モデルを構築した。止葉を含む上位3〜5枚の葉身形態の遺伝的変異を解析したところ,葉身長,葉身幅ともに大きな変異が認められたが,両者の関係は一様ではなかったことから,葉身形態の遺伝的変異を表すためには長さと幅を個別に取り扱い必要があることが示唆された。一方,個葉面積は,品種に関わらず,個葉面積=0.75×葉身長×葉身幅によって表されることが示された。さらに個葉形態は12個の直角三角形の組み合わせによって近似できた。以上の情報は,群落内光シミュレーションの簡易化に役立つものと考えられた。この他,圃場条件において3次元形態情報とあわせて群落内の光強度の測定も行った。これらのデータは,光シミュレーションの検定に使用する予定である。
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