研究概要 |
近年,遺伝子組換え作物が草本植物を中心に利用されるようになってきた.しかしながら,木本植物の果樹類では,形質転換体の商業的な栽培は,我が国はもとより諸外国においても行われていない.本研究の目的は,我々がこれまでに茎頂培養から,形質転換系までの組織培養系を確立してきたカキを材料に,遺伝子組換え個体の商業的利用の場面を想定して,形質転換体を作出し,圃場で栽培して評価することにある.本年度は以下の3点を検討するとともに,過去4年間の研究のとりまとめを行った. 1)選抜された系統の大量増殖法の確立 これまでに選抜されてきた系統を大量増殖するための方法を検討し,効果的な挿木法を確立することに成功した.この方法は,ミクロ繁殖した個体を母本にすることで,従来挿し木繁殖が困難であるとされていたカキにおける挿し木繁殖を可能にしたものであり,煩雑な無菌操作を必要としない上に,コスト面から見てもミクロ繁殖に比べてかなり有利であり,実用的であると考えられた. 2)カリフォルニア大学の研究圃場で育成中の個体の調査 カリフォルニア大学で育成している選抜系統の調査を海外共同研究者のDandekar教授と連携して行い,グリシンベタイン生合成能を賦与したカキの形質転換体よりもソルビトール生合成能を賦与した個体において,矮化効果等がより強くみられることを明らかにした. 3)研究成果のとりまとめと公表 過去4年間で得られた研究成果をとりまとめて印刷して,冊子体にし,公表した.
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