研究概要 |
本研究は、我が国の水田の最も代表的な雑草種であるタイヌビエの種子休眠性機構を解析するとともに、石灰窒素などの休眠覚醒物質を水田の雑草防除に応用することを目的としたもので、平成14年度は研究3年間の最終年度である。 1.ヒエ属種子における休眠性の遺伝様式の解析 種子休眠性を遺伝的に欠損する栽培型タイヌビエと休眠性を顕著にもつ雑草型タイヌビエを交雑し、自殖F_2,F_3種子の休眠の強弱を調べたデータを解析した。正逆F_1個体の花粉、種子稔性は、交雑両親と変わらず、大きかった。自殖F_2種子の開花後40日の発芽率は、正逆とも約40%であった。この種子休眠性に対して、交雑両親の種子の休眠覚醒パターンから休眠誘導遺伝子と休眠維持遺伝子から成る2遺伝子モデルを仮定した。このモデルに対して、自殖F_3種子の開花40日後の採種から0、60、100日後の発芽率をX^2検定した。その結果、この2遺伝子モデルは、休眠誘導遺伝子と休眠維持遺伝子が不完全優性であるとき、非常に大きい適合度を示した。 2.休眠覚醒物質の圃場試験 石灰窒素肥料のイネ刈り取り後と春期の植え代前の施肥は埋土種子を休眠覚醒させ、発芽、発生した幼植物を冬期の低温や植え代作業によって枯死させることができ、ヒエ属雑草の生態的防除に利用可能である。この観点から、水田に試験区を設け、2000年秋期から石灰窒素処理を繰り返してタイヌビエの発生数と埋土種子集団の動態を測定している。本年度(3年目)の春期処理においても、出芽数の増加とより斉一な出芽がみられ、除草効果が高められた。秋期処理においても、季節外の休眠覚醒とそれに伴う出芽、死滅種子の増加がみられた。調査開始時(2000年秋期)に面積100cm^2、深さ20cmの土壌中に平均272.6粒存在した埋土種子は2年半で無処理区で83粒、300kg/ha区で76粒、600kg/ha区で65粒に減少した。
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