研究概要 |
大腸がんや大腸炎などは、その進展度に相関してinducible nitric oxide syntase(iNOS)やcyclooxygenase-2(COX-2)の発現が増強される。現在、このような消化器系疾患の予防・治療薬として非ステロイド系抗炎症剤が汎用されているが、長期の服用には副作用が懸念されている。そこで本研究では食品成分に着目し、デキストラン硫酸塩(DSS)誘発マウス潰瘍性大腸炎(UC)モデルを用いて、zerumbone(ZER、東南アジア産ニガショウガに含まれるセスキテルペン類でin vitroでiNOS/COX-2の誘導を抑制する)、nimesulide(NIM、選択的COX-2阻害剤)、および両者の複合作用を検討した。飲料水中5%のDSS投与によりUCを誘発し、試料中の用量は餌中1,000ppmで、DSS投与の1週間前から2週間投与した。その結果、ZERは大腸粘膜中のIL-1β、PGE2、びらん、浮腫形成などを、NIMはびらん、浮腫形成を、複合系ではIL-1β、びらん、浮腫形成などをそれぞれ有意に抑制した。特に、ZERとNIMの複合投与群は組織学的解析において優れた抑制効果を示し両者の相乗効果が見られた。一方、ZERはazoxymethane誘発のラット大腸aberrant crypt foci形成抑制試験において、餌中500ppmの投与量で有意な抑制作用を示し、さらに大腸粘膜中のCOX-2のタンパク質の発現やPGE2の生成量を低下させていた。以上の2つの研究結果から、in vitroの知見と同様、ZERは経口投与でもCOX-2の発現を抑制することによりPEG2を制御できることが判明し、合成薬剤に代わる新しい機能性食品成分として期待できることが明らかとなった。
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