食生活の欧米化に伴い、我が国における種々の生活習慣病の罹患率が激増していることは周知である。大腸がんや潰瘍性大腸炎などのinflammatory bowel disease (IBD)などはその典型と言える。IBDの分子機構は極めて複雑であるが、炎症細胞から産生されるサイトカイン、プロスタノイド、フリーラジカルが中心的役割を担い、互いにクロストークしていると考えられている。本研究では、それらのうち、病態の進行度に相関して発現するinducible nitric oxide synthase (iNOS)およびcycloo xygenase-2 (COX-2)に着目し、それらのde novo合成を抑制する食品因子が実際にin vivoで抗炎症性や抗発がん性を示すか否かを検討した。ノビレチン(NOB)は、カンキツ類に含まれるポリメトキシフラボノイドであるが、ラット大腸発がんマーカー形成抑制作用および大腸発がん抑制作用を示す。ゼルンボン(ZER)は東南アジア産ニガショウガに含まれるセスキテルペン類であり、マウス皮膚炎症および皮膚発がん抑制作用、ラット大腸発がんマーカー形成抑制作用、さらにマウス潰瘍性大腸炎抑制作用を示した。ZERとNOBには多くの共通した作用機構が認められた。例えば、経口投与では、ラット大腸粘膜におけるCOX-2の発現やPGE_2量の低下を認めた。これらの分子メカニズムには不明な点が未だ多く残されているが、RAW264.7細胞においては、LPSによるIκBの分解を抑制することが特徴的である。iNOSやCOX-2遺伝子の発現には転写因子NFκBが重要であるが、その制御はNFκBの抑制因子IκBの分解が鍵段階である。従って、両者はLPSによるIκBの分解を抑制することでNFκBの活性化を抑制し、iNOSやCOX-2遺伝子の発現を低下させているものと思われる。
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