研究概要 |
葉緑体DNA変異を用いた種子の親子鑑定法の開発を行った。さらにマツノザイセンチュウ病抵抗性種子の生産を目的として造成された採種園への応用を試みた。その概要は次の通りである。 1.葉緑体DNA上の塩基配列多型を明らかにするために、全マツノザイセンチュウ病抵抗性クロマツクローン(16クローン)の52非コード領域、計13,360bpの塩基配列を決定した。これはクロマツの全非コード領域(約39,000bp)の1/3に相当する。また、コード領域の5,209bpについても塩基配列を決定した。コード領域と非コード領域を合わせた全長は、約19kbpであり、葉緑体ゲノム全体の1/7である。その結果、5箇所の非コード領域で7つの種内変異が認められた。これらの変異は一塩基置換が2箇所、多型的SSRが3箇所、逆位が1箇所、挿入・欠失が1箇所であった。 2.葉緑体DNAが片親のみから遺伝(父性遺伝)する特性を利用して、葉緑体DNA分子マーカーの事業用(採種園産)種子への応用を行った。種子中の胚乳組織は母親の葉緑体DNA型を、胚組織は父親の葉緑体DNA型をもつため、採種園産種子の胚乳と胚の葉緑体DNAを別々に分析することにより種子の生産に関与した母樹と花粉親を特定することができる。1998年と1999年の福岡県産種子と1999年の鹿児島県産種子を用いて、各クローンの母親もしくは父親としての寄与率を評価した。その結果、すべてのクローンが均等に次代(種子)の生産に寄与しているのではなく、少数のクローンが種子生産に寄与している実態が明らかとなり、採種園管理上の大きな問題が指摘された。
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