本年度は、キトサン金属塩(キトサン金属複合体CCC)処理木材の長期効力持続性について検討した。アカマツ杭にCCC溶液を、2段階の薬剤成分量レベル(レベル1[0.67kg/m3]とレベル2[1.18kg/m3])で加圧注入処理したうえで鹿児島県日置郡吹上浜国有林内のシロアリ生息地に1992年に埋設し、丸5年経過した時点での蟻害度と劣化形態、薬剤成分の分布について調べ、これらから効力持続性を評価した。(1)CCC処理材(レベル1およびレベル2処理材)の蟻害度は5年目まで全くゼロであった。これに対して、無処理材は設置後1年で、地上部を残して、地中部は完全に消失した。(2)レベル2処理杭内部の薬剤成分(銅元素)の分布を呈色反応によって調べたところ、呈色部位は樹脂道と放射組織に限定されていた。しかもその部分の呈色は杭の中心部にまで均一に見られた。(3)呈色部位をSEM-WDXAで詳しく調べたところ、放射組織内では放射柔細胞の中間層や細胞間隙のところで強いピークが認められた。仮道管では、分野壁孔の部分を除いて、内腔や中間層ではピークは検出されなかった。また、杭表面から数細胞中ではピークが認められたが、それより内側ではピークは放射組織と樹脂道中に限られていた。なお、スギでは軸方向樹脂細胞のところでも強いピークが観察された。樹脂道中では、樹脂道内腔表面において強いピークが観察された。呈色反応とWDXAの結果から、CCC中の銅元素は加圧注入処理において柔組織の細胞間隙中を移動していたことが分かった。(4)仮道管壁において、シロアリによる食害痕や腐朽菌による劣化痕はまったく観察されなかった。レベル1処理材では、杭表面から約0.5mm深さまでは、壁孔膜の消失、孔口の拡大、細胞壁の微細なクラツクなどの劣化痕が観察されたが、レベル2処理材では、そのような劣化痕は全く観察されなかった。また、CCC処理杭の表面において、シロアリによる食害痕は全く観察されなかった。以上の結果、CCC処理材は5年間以上の効力持続性が確認できた。
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