平成12年度はキトサン金属塩(キトサン銅複合体:CCC)の薬剤安全性について検討した。過去に獣医学教員の協力を得て、ラットによるCCCの経口毒性試験を予備的に行ったとこ口、3000ppm/kgでも異常は認められなかった。本研究ではCCCの安全性確認を財団法人食品農医薬品安全性評価センターに委託した。委託試験項目は急性経口毒性試験、目一次刺激性試験、皮膚次刺激性試験、皮膚感作性試験、復帰突然変異試験の5項目とした。(1)CCC微粉末を絶食状態の5匹のラットに2000mg/kg投与し、7日間継続観察の後、病理解剖検査した結果、死亡例はなく、観察期間中の体重減少も異常な症状も全く認められず、剖検所見でも異常がなかったことにより、CCCのラットに対するLD50値は2000mg/kgより大であることが判明した。(2)CCC微粉末0.1grをウサギ右目に処置し、左目を無処理として7日間観察した結果、処置1時間後から7日までの間に、虹彩の変化はなかったが、角膜に強い炎症反応が認められたことにより、CCCはウサギの眼に対して強度刺激物と判定された。(3)CCC微粉末500mgをウサギの皮膚に4時間閉鎖パッチした後、72時間観察した結果、この間に皮膚反応は全く見られなかったことから、ウサギの皮膚に対する刺激性はないと判定された。(4)5匹のモルモットにAdjuvant & Patch法でCCC200mgを48時間閉鎖貼付後、皮膚反応を観察したが、全く反応は認められず、モルモットの皮膚に対する感作性はないと判定された。(5)細菌類を用いてCCCの復帰突然変異スクリーング試験を行った結果、陽性対照物質には顕著な突然変異の誘発が見られたのに対して、CCCは全く突然変異を誘発せず陰性であることが判明した。以上の結果、CCCは直接眼に入れば炎症を引き起こす可能性があるものの、経口毒性、皮膚感作性、突然変異誘発性などは全くなく、極めて安全性の高い薬剤であることが確認された。
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