近年のマイクロエレクトロニクスの急速な発展は、海洋生物の行動生態研究に画期的な研究手法を提供することとなった。現在、各種のマイクロデータロガーや超音波テレメトリー並びに人工衛星によるテレメトリーなどによって、海洋生物の遊泳水深、遊泳速度・加速度、経験水温、体内温度等が得られるようになってきている。また、我々の研究によって自由遊泳中の海洋生物の心拍数の計測も可能となった。 本研究においては、これらのセンサーに加えて、地磁気センサーを搭載したデータロガーを開発し、これにより海洋生物の三次元行動を測定しようとするものである。 平成12年度、地磁気センサーと加速度センサーを組み合わせた最初のプロトタイプを製作した。このプロトタイプを平成12年度及び13年度に亘ってタイ国水産局(現海洋沿岸資源局)傘下のウミガメ保護ステーションにある飼育池(約5ヘクタール)で実際のウミガメ(アオウミガメおよびタイマイ)に装着してデータを取得した。この実験によって、このプロトタイプのデータロガーによってウミガメの遊泳方向並びにウミガメの遊泳推進力であるフリッパーの頻度が測定できることが分かった。これらの実験結果を下にプロトタイプの改良を行い平成14年度と15年度に実海域実験をアンダマン海におけるアオウミガメの重要な産卵地であるシミラン諸島フーヨン島において実施した。この結果、当初の目的であるウミガメの実海域における三次元の遊泳行動の再現に成功した。
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