研究概要 |
1. 果菜類接ぎ木苗の活着程度を評価する方法は,目視による成否のみが現状で,成苗後に生理障害が起きることもある。活着程度の情報化に関する研究には,様々報告されているが,いずれも継続的な計測が困難である。本研究は,植物に形態的変化が現れる以前に予測可能となりうる微妙な信号として生体電位に注目し,非破壊で活着程度が測定できる方法としての検討を行った。これが可能となれば,接ぎ木苗の養生環境を最適制御する場合の有益な情報となりうると同時に,生体情報フィードバック型の養生装置が構築できる。 2. 供試材料は,接ぎ木適期に断根挿し接ぎしたトマト苗である。接ぎ木接合部における活着程度に応じて,断根した台木の不定根形成が促進すると考えた。測定項目は,不定根の本数と長さ,台木の茎表面と根系を含む培地間の電位差である。なお,培地には,ピートモス,パーミキュライト,水のみの三種類を用意し,接ぎ木後0,24,48,72,96,120時間目(養生装置内)と,その養生装置から栽培環境に移動後,5,10,20日後目に計測した。電極は,台木の峯軸に+極を固定し,グランド極は培地内に接地した。電極を付けた苗は,温度25℃の環境制御箱内に移し,暗期(6時間)と明期(6時間,苗の高さで約15μmol m2s 1l)を1分ごとに電位計測した。 3. 電位計測の結果,暗期よりも明期の冠位振幅が大きくなる傾向が認められた。断根挿し接ぎ苗における不定根の発達状態を接ぎ木後の経過時間毎に,培地別に調べた結果,養生期間中は,不定根がほとんど形成・発根しなく,これらの苗は,12時間の電位計測環境で枯死する場合もあった。不定根の発達と電位との相関係数を,総根長と本数,計測期間,培地別に求めた結果から,計測期間では初期の方が相関係数が大きく,培地では,バーミキュライトと水のみで,全期にわたって相関係数が大きくなった。
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