研究概要 |
本研究の目的は,環境と植物の関係を表す環境-植物遺伝子モデル、農業における収量予測のための作物生育モデル、植生変化および収量変化の予測モデルなどの植物関連モデルと、気象データ・環境データベースを情報ネットワーク上で有機的に結合させて、様々な研究ニーズに対応するネットワーク対応型の環境植物シミュレータを試作開発し、多数の研究者がネットワーク上でモデルを評価、活用する実験的な環境を構築することである。本研究では,異なる2つのレベルのモデルを対象とする。1つは個体・群落レベルであり、作物生育モデル、地球温暖化問題における植生変化および収量変化の予測モデルなどの植物関連モデルである。もう1つは、遺伝子発現・機能レベルのモデルであり、環境が植物反応に及ぼす影響を評価、予測するためのモデルである。 今年度は,まずサーバ対応型の個体レベルの生育モデルシミュレーション実行システムを構築した。つぎに,作物に関して、従来の生理反応をベースにするプロセスモデルに遺伝子発現レベルの現象をモデル化して組み込む方法について検討した。その一例として,環境ストレスである大気汚染ガスが生理反応に影響を及ぼす現象のモデル化を検討した。具体的には,コマツナを材料とし,オゾンガス曝露レベルとオゾンガスにより生じる活性酸素の消去に関わる遺伝子発現に関する植物実験を行った。まず,活性酸素消去系酵素であるSOD, APX, CATの酵素活性を測定し,コマツナのオゾン耐性の品種間差は,定常状態における酵素活性の違いが一因との結論を得た。またこれら酵素を合成する遺伝子の転写レベルでの差異を調べるために,コマツナでは配列が未知であるこれらの遺伝子の塩基配列を近隣植物種から予測し,degenerateプライマーによりホモログを抽出し,その部分塩基配列を解読した。それを基に,mRNAの定量解析を試みた。
|