研究概要 |
次年度(平成13年度)は,ウシ生体レベルでの黄体形成促進活性化の方法論の確立に集中した。まとめると,以下の点に要約される。 1)これまで,形成期の黄体組織内に長針を用いて,直接的に血管新生刺激因子を投与するモデルを予備的に試してきたが,それだけでは,十分な黄体形成刺激となっていないことを示唆する結果となった。したがって,次年度では,初年度の研究から明らかになった,排卵直後から顆粒層細胞はLHとIGF-1によって黄体化しながら大量の血管新生刺激因子であるVEGFを放出する,という事実を重要視した。すなわち,血管新生の活発な時期にhCGを筋肉内投与して,黄体組織の構築とともにP分泌を促進できるかについて検討した。 2)実際には,排卵後3日目の乳牛にhCGを1500単位投与して,その後の黄体の大きさと黄体内の血流像の変動とともに,血中P濃度の変動を調べた。その結果,このhCG処置は,黄体形成(大きさ)と血液量を明らかに強く刺激し,それを裏付けるように,血中P濃度も2倍近く高くなった。この事実は,hCG処置が黄体の血管新生とP分泌の両方を刺激していることを示している。 3)以上の結果に基づき,最終年度では,hCG処置を施すと同時に,血管新生刺激因子であるVEGFやアンギオゲニンを黄体組織内に打ち込み,その相乗作用について検討する。また,血管構築因子であるアンギオポエチン(Anpt)や,血管内皮細胞の分泌能(PGおよび血管作動性ペプチド)の変化を解析する。
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