研究課題
1993年北海道でダニ媒介脳炎(TBE)の患者が初めて確認され、我々は原因ウイルスの分離に成功した。このことより日本におけるTBEウイルスの流行巣の存在が確認された。さらに近年ロシアへ旅行する日本人が急増している。従って本研究では1)中和試験に代わるELISAによる血清診断法を開発する。2)単クローン性抗体による簡便なウイルス同定法を確立する。3)最近流行しているTBEウイルスに対してのヨーロッパ型のTBEウイルスワクチンの効果を判定する。これらによりTBEに対する総合的な予防対策を立案する。まずTBEウイルス渡島株に対して単クローン性抗体を作出した。7コの単クローン性抗体(Mab)が得られ、これらはすべてエンベロープ蛋白を認識していた。これらのMabは反応パターンから、フラビウイルス属特異的、TBEウイルス群特異的、およびTBEウイルス特異的なものに分けられた。これらMabを用いた蛍光抗体法により、迅速なウイルス同定法が確立された。次に1999年〜2000年にロシアのハバロフスク市周辺、ウラジオストック市周辺およびイルクーツク市周辺で採集したマダニ類からウイルスを分離して遺伝子解析を行ったハバロフスクおよびウラジオストックから分離されたTBEウイルス株はすべて極東型と同定された。一方イルクーツクからのウイルス株はすべてシベリア型と同定された。TBEウイルス極東型株とシベリア型株に対するヨーロッパ型TBEウイルスワクチンの効果を判定した。ワクチン接種者は極東型およびシベリア型TBEウイルスに対して良好な中和抗体応答を示した。さらにマウスにおけるワクチン効果を判定したところ、ワクチン接種マウスは両ウイルス株の攻撃に対して有意な防御を示した。従ってTBEウイルスヨーロッパ型ワクチンは現在シベリアと極東地区に流行しているTBEウイルスに有効であることが判明した。
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