研究課題
本研究では北海道で近年発見されたダニ媒介脳炎(TBE)の具体的予防対策のために、安全で簡便な血清診断法を開発し、血清疫学調査によりウイルス汚染地を特定する。さらに近年ロシア等の流行地で流行しているウイルス株に対する市販のワクチンの効果を評価する。まずTBEウイルス渡島株に対して単クローン性抗体を作出した。7コの単クローン性抗体(Mab)が得られ、これらはすべてエンペロープ蛋白を認識していた。これらのMabは反応パターンから、フラビウイルス属特異的、TBEウイルス群特異的、およびTBEウイルス特異的なものに分けられた。これらMabを用いた蛍光抗体法により、迅速なウイルス同定法が確立された。次に1999年〜2000年にロシアのハバロフスク市周辺、ウラジオストック市周辺およびイルクーツク市周辺で採集したマダニ類からウイルスを分離して遺伝子解析を行った。ハバロフスクおよびウラジオストックから分離されたTBEウイルス株はすべて極東型と同定された。一方イルクーツクからのウイルス株はすべてシベリア型と同定された。TBEウイルス極東型株とシベリア型株に対するヨーロッパ型TBEウイルスワクチンの効果を判定した。ワクチン接種者は極東型およびシベリア型TBEウイルスに対して良好な中和抗体応答を示した。さらにマウスにおけるワクチン効果を判定したところ、ワクチン接種マウスは両ウイルス株の攻撃に対して有意な防御を示した。従ってTBEウイルスヨーロッパ型ワクチンは現在シベリアと極東地区に流行しているTBEウイルスに有効であることが判明した。
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