研究課題/領域番号 |
12556052
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
梅村 孝司 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (00151936)
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研究分担者 |
千葉 仁志 北海道大学, 医学部・附属病院, 講師 (70197622)
島田 章則 鳥取大学, 農学部, 教授 (20216055)
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キーワード | Neospora caninum / ネオスポラ症 / 牛の流産 / 人獣共通感染症 / ズーノーシス |
研究概要 |
Neospora(N.)caninumは牛に流産を起こす原虫である。N.caninumによる流産は世界中で発生し、日本でも1992年の報告依頼、全国各地で発生が報告され、牛における流産の原因の一つとして大きな経済的損失を与えている。 本年度は、N.caninumによる流産を2度起こした成牛の病理組織学的検索並びにこの成牛からの原虫の分離を試みた。その結果、流産胎仔のN.caninum感染に見られる病変と類似した病変が成牛の脳に認められた。また、この成牛の大脳からN.caninumのタキゾイトを分離した。よって、この成牛における中枢神経病変はN.caninumによって惹起され、抗体陽性成牛での潜伏感染部位は脳であることが示唆された。さらに、疫学調査によりN.caninumの伝播経路のが垂直感染であることが示唆された。これらの結果より、抗体陽性成牛の脳に潜伏感染したタキゾイトが何らかの原因で再活性化し、胎仔に垂直感染することが推察された。 次に、ヒトにおける抗N.caninum抗体保有率を調査し、ヒトへの感染の可能性を検討した。その結果、何らかの病気を持つ271人中4人が間接蛍光抗体法およびELISAにて抗N.caninumIgG抗体を保有しており、これらの人々は何らかの機会にN.caninum抗原に感作された可能性が示唆された。 最後に、分離したN.caninumをヌードマウスに腹腔内接種してマウスの病理検査をしたところ、原虫が中枢神経系のみならず、膵臓や胃腸粘膜にも出現していた。感染マウスの腸内容を他のヌードマウスに腹腔内接種したところ、感染が成立した。従って、N.caninum感染ヌードマウスでは原虫が糞便に排泄され、水平伝播の感染源になりうることが示唆された。
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