研究課題/領域番号 |
12556054
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中山 裕之 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (40155891)
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研究分担者 |
吉川 泰弘 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (80109975)
森 裕司 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (40157871)
土井 邦雄 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (70155612)
佐々木 伸雄 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (60107414)
小野 憲一郎 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 教授 (50111480)
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キーワード | 遺伝子発現 / 神経原線維変化 / 動物 / 脳 / 比較進化学 / 老人斑 / 老化 |
研究概要 |
本研究のこれまでの成果から老齢動物の脳における組織変化が明らかになり、「ヒト以外の動物では老化にともなって老人斑は形成されるが、神経原線維変化(NFT)は形成されない」など脳老化の比較生物学的問題点が明確になった。これをふまえて脳老化機構、とくに老人斑とNFTの形成について比較動物学的な考察を試みた。ヒトアルツハイマー病脳ではβアミロイドの過剰沈着がおこり、これが神経細胞に毒性を発揮、タウの異常リン酸化を引き起こしてNFTが形成され、神経細胞が脱落する(アミロイド仮説)。この過程は通常十年以上を要し、このためアルツハイマー病は老齢期に発症する。こうした神経系の老化は遺伝子操作などをしない自然状態では、動物種によらない絶対時間を必要とするのだろう。動物の種類が異なっても、この絶対時間は変わらない。ヒト以外の動物の寿命は、老人斑を形成するには十分であるがNFT形成・神経細胞脱落に至るには足りないと考えられた。(研究発表論文参照) このようにヒト以外の動物が脳老化の比較進化学的研究に極めて重要であること、および老化研究における比較進化学的視点の重要性が確認された。 上記の仮説を立証するために、各種動物の脳における遺伝子発現を網羅的に調べる研究に着手した。その手始めとして様々な年齢のイヌ脳組織における遺伝子発現を調べた。これにはヒトの神経系関連遺伝子マイクロアレイフィルター(東洋紡製)を用いた。このフィルターに用いられている遺伝子群はヒトに由来するが、それらの塩基配列は動物種によらず比較的よく保存されている部分が用いられており、イヌの組織に対しても十分使用できると考えられる。この結果、老犬ではGFAPなど神経老化関連遺伝子の発現が増加していたが、アミロイドβ前駆体タンパク質(APP)遺伝子の発現は変化なかった。今後、症例数を増やし、次の研究計画へとつなげていく予定である。
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