研究概要 |
脂質滴にはカベオリンの局在が見られるほか,コレステロールがエステルとして大量に貯留し,細胞膜のコレステロール濃度を維持する上で重要な位置を占める.我々は脂質滴を構成する蛋白質を質量分析法(LC/MS/MS法)によって網羅的に検索し,コレステロール合成系酵素,シャペロン,機能未知の分子のほか,低分子量GTP結合蛋白質を同定した.今年度は低分子量GTP結合蛋白質(以下LD-Rab)について解析した. LD-RabにGFPタグなどを付加した分子はSudan III陽性の脂質滴に局在し,質量分析法の結果と一致した.他のRabとの相同性に基づいて作製したLD-Rabのdominant-positive form (Q67L)も同様であったが,dominant-negative form (S20N)は細胞質ゾルに禰漫性に分布し,脂質滴への集中が見られなかった.LD-Rab (wild-type)またはLD-Rab (Q67L)が局在する脂質滴では,構造蛋白質であるADRPが脱落する傾向が見られた.またこれらの細胞では電顕観察により,粗面小胞体の一部が脂質滴に密着している像が認められた. 上記の結果は脂質滴にも低分子量GTP結合蛋白質が存在することを明らかにし,さらにLD-Rabによって他の膜系と脂質滴の関係が調節されている可能性を示唆する.またADRP脱落は脂質滴の構造としての維持に影響を与え,細胞全体の脂質動態にも変化をもたらすと推測される.今回明らかになった系をマニピュレートすることを通じて,細胞膜のラフト・カベオラの機能制御を行うことも可能であると考えられる.
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