イオンチャネル、受容体は生体の機能に重要な役割を果たす分子である。その構造機能連関の解明は、生理学的にも、生物物理学的にも興味ある課題である。本研究では、代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1)の動的構造変化を、光学的手法FRET(Fluorescence Resonance Energy Transfer)法の適用による解析を試みた。我々は、これまでに、mGluR1が、グルタミン酸のみならず細胞外のCa2^+やGd3^+といった多価陽イオンによっても活性化される性質を持つこと、さらに、その感受性がアフリカツメガエル卵母細胞、HEK293細胞等の発現系に依存して異なることを見いだし、その差異を生み出す分子基盤としてリン酸化状態の差異、糖鎖付加状態の差異、クラスター化分子の有無等を想定した。mGluR1はホモ2量体で構成されグルタミン酸の結合によりサブユニット間の揺らぎの平衡がシフトすることにより活性化がおこると考えられている。そこで、FRET法によりこのサブユニット間の相互作用を測定し、さらにこの過程に対するクラスター化分子や多価陽イオンの存在の影響を評価することを目的として、本研究を開始した。mGIuR1のカルボキシ端の細胞内領域に遺伝子工学的にECFPとEYFPを付加した分子を作成し、その構成するヘテロ2量体において、FRETを検出した。FRET効率が低かったので、その効率を高めるためにlinkerを挿入する等の改良を行った。今後、このFRET効率に対する多価陽イオンやクラスター化分子の存在の影響について解析を進めていく計画である。
|