研究概要 |
まず,受容体,酵素,イオンチャネルなどの生体にとって機能的に重要な蛋白質を,発現系を用いた方法により,確立した細胞系に導入して発現させ,細胞モデルを作製し,神経伝達物質,電位依存性イオンチャネル,細胞増殖因子等による細胞刺激により,発現蛋白質の動態を解析することで,薬物の効果判定や創薬の開発に役立つ系を確立することができる。本研究では,とくに,細胞内カルシウムイオン(Ca^<2+>)に焦点を合わせ,低濃度のCa^<2+>によって活性化されるCa^<2+>/カルモデュリン依存性プロテインキナーゼ(CaMK)I,II,III,IV,キナーゼ(K)の活性化反応による細胞機能を研究する。 CaMKI〜IV,KKの構造的解析が進み,クローニングされている。活性化機構が明らかにされ,各サブユニットのATP結合部位,触媒部位,調節部位が明らかにされている。すなわち,細胞内における低濃度のCa^<2+>およびその作用を伝達しているCaMKI〜IV,KKの機能的意義を確かめ,それぞれの酵素を遺伝子工学的方法によって細胞内に導入し,その調節機能と細胞機能を検索することを目的としている。今年度は,CaMKIIの細胞質と細胞核にそれぞれ局在する細胞質型と核移行型をNG108-15細胞に発現させ,脳由来神経栄養因子(BDNF)発現に対する影響を調べた。細胞質型CaMKIIδ1,CaMKIIδ2の発現によっては,BDNFの発現は不変であったが,核移行シグナルを持つCaMKIIδ3,CaMKIIαBの発現によって,細胞質でのBDNFの発現が増加した。定量的RT-PCR法によってmRNAを測定すると,Exon IV-BDNF mRNAが有意に増加し,Exon III-BDNF mRNAの増加を認めなかった。これらの結果は核移行シグナルを持つCaMKIIのみがmRNA,蛋白質の発現にかかわっていることを示している。
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