本研究では、発生工学的技術を活用し、ヒト白血病転座関連遺伝子群やがん抑制遺伝子群を用いた遺伝子導入ショウジョウバエ系統を網羅的に樹立して、それらと遺伝的相互作用するショウジョウバエ遺伝子を同定し、さらにそれらのヒトホモログをクローン化することにより、白血病やその他のがん治療薬の新規分子標的を探索することを目的としている。これまでに、ヒトの骨髄異形成/骨髄性白血病において見られる転座型融合遺伝子NPM-MLF1やヒトの骨髄異形成/骨髄性白血病因子hMLF1(human myelodysplasia/myeloid leukemia factor 1)のショウジョウバエホモログdMLF遺伝子を導入した遺伝子導入ショウジョウバエ系統を樹立し、dMLFがショウジョウバエのアポトーシス誘導因子、Reaper、Hid、Grimによるアポトーシス誘導機構において抑制的に働く因子であることを明らかにしていた。平成14年度は、dMLFとCOP9シグナロソーム複合体のサブユニットであるdCSN3とが相互作用し、dMLFがdCSN3のC末端領域に存在するPClドメインに強く結合することを明らかにした。また、ヒトのヒストンメチル化酵素hG9aの遺伝子導入ショウジョウバエ系統も樹立した。ヒトのhG9aは、ヘテロクロマチン結合タンパク質hHP1との関わりが考えられ、以前樹立したヒトのhHP1β、γ遺伝子導入ショウジョウバエを利用して、遺伝学的相互作用を調べる予定である。
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