私達はこれまでに転写コアクティベーターCBPの変異マウスを作製し、CBPヘテロ変異マウスが種々の形態異常を示し、ヒトCBP遺伝子の変異によって生じる優性遺伝病Rubinstein-Taybi syndromeのモデルマウスと成りうることを示している。本年度はCBPホモ変異マウスを解析した。CBPホモ変異マウスは胎生期の12〜13日目で致死となる。解析の結果、CBPホモ変異マウスでは血管形成が不全であり、このため頭部で出血が観察され、これが死亡の主原因であると推定された。また、CBPホモ変異マウスでは神経管が閉じず、大きな形態形成異常が観察された。さらに、CBPホモ変異マウスでは肝臓での造血能が明らかに低下していた。このように、CBPは血管形成、形態形成、造血に重要な役割を果すことが示された。一方私達は転写コリプレッサーSno(ski-related novel gene)の変異マウスを作製し、解析した。Snoホモ変異マウスは発生初期に致死であり、SnoはBlastocystの形成に必須であることが示された。そして、snoヘテロ変異体は種々のがんを発症し、また化学発がん剤にも感受性が高く、高頻度にリンパ腫などのがんを発症することが示された。このように、ski/sno遺伝子はもともと発がん遺伝子として見い出されたにも拘わらず、がん抑制遺伝子としても機能することを明らかにされた。この研究によって、sno変異マウスは高発がん性のモデルマウスと成りうることが示された。
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