転写因子Schnurri-2(Shn-2)の変異マウスを作製・解析した。Shn-2はもともと我々が転写因子NF-κBの結合配列に結合する因子として同定したもので、2つのメタルフィンガー構造を持つ270kDaの大きな蛋白質である。ショウジョウバエのShnホモログはdppシグナル伝達経路上で機能していることから、動物細胞のShnはdppホモログであるBMP/TGF-β/activinシグナル伝達経路上で機能することが想定されている。Shn-2変異マウスは一見正常であるが、T細胞の分化に異常があった。Shn-2変異マウスの胸腺ではSingle-Positive T細胞がほとんど見られず、一連の解析から、Shn-2はT細胞のPositive selectionに必須であることが分かった。 これらの結果から、BMP/TGF-β/activinシグナル伝達経路がT細胞の分化に何らかの役割を果していることが示唆された。 また、転写コリプレッサーSkiの変異マウスを用いて、Skiの生理機能を解析した。Skiのヘテロ変異マウスに化学発がん剤を投与して、発がん実験を行った所、野性型マウスではがんが発症しなかったが、Skiヘテロ変異マウスではリンパ腫などのがんが多発した。さらにSkiヘテロ変異マウスから分離したfibroblasts細胞は発がん遺伝子rasによってトランスフォーメーションされやすいことが示された。 これらの結果から、Skiはある局面ではがん抑制因子として機能することが明らかにされた。
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