がんは遺伝子異常の積み重ねによって生じるという見解には現在では異論はない。がんの本質を理解し、がん治療の成績をあげるのは、がんをゲノムレベルで網羅的に解析する必要がある。しかも、各々の患者においてがんには個性があるといわれているように、がん症例各々の生物学的性状(悪性度)は大きく異なっている。残念ながら、各々の症例ごとにゲノム異常を測定し、客観的にがんの性質を評価する術はないのが現状である。このような背景のもとに、ひとがんの特性を解析するためのシステム開発を目的として、本研究では、人がんにおけるゲノム異常をゲノムアレイを用いて検出するための基礎的研究を行った。 (1)57種類のがん遺伝子ゲノムをスポットしたゲノムDNAマイクロアレイを用いて、ひと食道扁平上皮がんと肝細胞がんにおけるがん遺伝子のコピー数異常解析した。これらは、論文として既に発表済みであり、一部は現在投稿中である。 (2)ゲノムアレイ解析を利用するためのデータ処理ソフト開発のための検討。順次進化するために、今後も継続して検討を続ける。 (3)comparative genomic hybridization(CGH)解析データから、ゲノムアレイコンテンツ開発のための情報抽出と関連遺伝子同定を行いつつある。すでに、BAC contigの作成を終えたものもあり、現在BACゲノムアレイを作成中である。
|