我々は既にCTLA-4の細胞表面発現は、細胞内領域に存在するチロシンシグナルとAP-2との会合によって調節されている事を示した。しかし、CTLA-4を介する抑制シグナルの誘導にはこのチロシンモチーフは不要であることも明らかにした。実際、膜貫通領域・細胞内領域をGPIアンカーに換えた変異CTLA-4や、逆に細胞内領域をMHC分子に変換した分子を介しては、全く抑制シグナルが誘導されなかったことから、CTLA-4を介する抑制には膜貫通領域あるいは膜近傍の細胞内領域が必要な事が判明した。この領域にはPI3KやSHP2が会合することが報告されているが、これらが抑制シグナルに無関係なことから、新しい抑制機構を探した。その結果、CTLA-4をクロスリンクすると活性化型Rap-1GTPが誘導されることが判明した。Rap-1-GAPであるSPA-1を強制発現しておくと、CTLA-4による抑制はなくなったことから、CTLA-4で誘導されるRap-1が抑制に関与していると考えられる。Rap-1はLFA1の活性化など細胞接着に関与する事が最近明らかになった。実際、CTLA-4クロスリンクによって細胞に極性が生じ、ラメラポディアの形成が誘導される。T細胞と抗原提示細胞との接着によるシナプス形成におけるCTLA-4発現の影響を調べた結果、CTLA-4を高発現させても初期のシナプス形成には変化はなかったが、シナプスが永く持続せず、細胞が早く離れる結果になった。逆に、SPA-1を発現させた細胞では、シナプス形成が永く維持されることが判明した。これらから、CTLA-4によるT細胞活性化抑制は少なくとも一部分はシナプス形成の維持障害を含むことが判明した。
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